そなえ基金とは

そなえ基金について

東日本大震災から得た教訓

東日本大震災

2011年3月11日、東日本大震災は、私たちに、物質的にも心身にも大きな被害、影響をもたらしました。当時は自治体も被災する中、全国、また海外からも多くの支援者が駆けつけましたが、当時はNPO・NGOの活動に対する認知度も低く、事前の十分な信頼関係や連携体制が作られていなかったため、誰もが被害状況、支援状況の全体像を把握できず、支援のもれ・むらができ、効果的な支援につなげられませんでした。

この経験を踏まえて、2013年7月、全国域の災害支援組織が有志で集まり、日本国内における災害時の調整機能「JVOAD構想」について協議が始まりました。この仕組みは、海外での人道支援に対する調整を行っているOCHA(国連人道問題調整事務所)や、アメリカ国内における災害時支援調整を行うNational VOADの仕組みを参考にしながら、日本の地域にあった「災害支援コーディネーション」の機能を目指しています。そして2016年、武田薬品工業株式会社より、JVOADの立ち上げと組織基盤強化への支援を受け、11月、支援の調整役として「特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(通称:JVOAD)」の法人化が実現しました。2016年熊本地震以降、様々な災害への支援活動を行っております。

基金設立の背景

災害支援における社会課題

近年、日本国内において、自然災害の多発化、激甚化が深刻となっています。また、高齢化の進行や格差の広がりがある中、災害が起きることにより、支援課題(被災者の困りごと)はより複雑化、多様化しており、支援が十分に届かないケースや、被災者のニーズに対して活動がうまく結びつかないケースがあります。

障がいを持った方や、ペットや小さなお子さんがいる世帯など、様々な事情で避難所で過ごせず、被災した自宅で生活せざるを得ない。

環境が整えられていない避難所や崩れた自宅での避難生活が長引く事で、体調を崩される方がいる。

災害により壊れた自宅の再建がなかなか進まない。

JVOADは設立以降、その対応にかかわってきた経験から、被災者へより効果的な支援を行うためには、平時から支援者同士の連携体制を構築し、地域の災害対応力を強化していく「そなえ」の活動が最も重要であることを痛感しました。
こうした状況の中、日本各地での災害対応の「そなえ」は、追いついていない状況です。たとえば、避難所での安心安全な生活をささえる、被災したすまいを再建するためには、官民が力を合わせ地域での対応力を高めておくことが不可欠です。

「災害支援そなえ令和基金」の設置へ

JVOADは、上記のような社会課題解決に向けて、平時から災害支援の担い手を地域に育成し、そしてその専門的な能力を高め、それらの地域資源が効果的に力を発揮できるような、支援調整の仕組みを各地域につくるため設立から5周年を迎えた2021年11月1日、この取り組みを、全国から応援できる仕組みとして「災害支援そなえ令和基金」を創設しました。
いざというときに対応できる、それぞれの地域にあったネットワーク作りを、普段から応援していく、そのための基金です。

本基金は、天皇陛下御即位に際してJVOADに贈与された御下賜金の一部を活用し設立され、今後広く企業、団体、個人等から賛同及び寄付を求める事によって、持続可能な災害支援のたすけ合いの仕組みをつくることを目指します。

基金を通じた活動は国連SDGs(持続可能な開発目標)における17の目標のうち、日本国内において、ターゲット11,11b,および13,13.1の解決につながることが期待されます。

11住み続けられるまちづくりを 13気候変動に具体的な対策を

様々なかたちで、この基金を応援していただくことで、平時から全国各地での「そなえ」を充実させ、誰一人取り残さない支援をめざして参ります。

基金へのご賛同とご参加をよろしくお願いいたします。

日本各地で取り組む「そなえ」

いざというときのために対応できる、
被災者支援における支援調整(コーディネーション)の仕組みとは。

被災者支援は、行政、社協、NPO等、それぞれが役割を担い、各地で主体的に進められます。しかし、それぞれが独自に活動を展開するだけでは、支援の「もれ・むら」が生じうるため、平常時から支援関係者の連携促進に取り組み、災害発生後はその連携を活かして、被災者のニーズと支援の全体像を把握・共有し、被災現場における活動を支援するとともに、課題解決に向けた調整を行います。
このような被災者支援における課題解決に向けた調整を行うためには、普段から仕組みを作り、役割分担を行い、訓練・研修と積むことで、実践で、生きた支援につながります。

  • コミュニケーション

    地域において、さまざまな支援者同士(自治体・市民団体・企業など)のつながりづくりが実現します。どういう担い手が、どういう支援ができるのか、お互いを理解することで、いざというときの連携の土台が築かれます。

  • コーディネーション

    地域が主体となって、効果的な支援活動がおこなわれるよう、適材適所「もちは餅屋」の支援調整が可能になります。地域の限られた資源をどのように配分するか、被害状況、被災者のニーズにもとづき、支援のモレ・ムラをなくします。

  • コラボレーション

    様々な支援者が得意な分野を生かし協力し合い、支援にあたることで、多様な困りごとを解決することが可能になります。また平時からお互いの支援能力を高めることも期待できます

本基金は、普段からの「そなえ」を応援する仕組みです。

災害支援コーディネーションの具体事例

令和元年房総半島台風(台風15号)

2019年9月に発生した台風15号の影響により、停電934,900世帯、断水127,307世帯に加え、千葉県、東京都大島を中心に、屋根瓦・外壁などの損壊・室内外の散乱、続く雨による二次被害など、多くの住宅が被害を受けました。特に千葉県の被害は甚大となり、約34,000世帯(2019年10月7日時点 )の家屋が被害を受けました。
圧倒的な数の被災者からのニーズに対し、県・内閣府・国交省(建設業協会)・自衛隊・消防・NPOの官民連携が実現し、家屋の応急処置として屋根瓦へのブルーシート張りに対応しました。また、対応にあたる際には、技術系の支援団体による、自衛隊へのブルーシート展張の適切な張り方と、安全面についての講習会が開催されました。
官民が連携し、対応したブルーシート展張の件数は約5,000件(内閣府防災による)となります。

ブルーシート会議
①行政とNPOとの現場での打ち合わせ
瓦屋根ブルーシート講習会
②専門性をもった支援団体による、自衛隊へのブルーシート張りと安全面における講習会
ブルーシート屋根張り
③NPOと自衛隊との現場での支援活動の様子

基金のつかいみち

ネットワーク構築で誰一人取り残さない支援の実現に向けて

47都道府県域に災害支援コーディネーション(調整機能)の仕組みを!
本基金は全国の災害対応力の底上げをめざします。

「災害支援そなえ令和基金」を通じてご支援いただいた資金は、JVOADによる伴走支援を実施しながら、都道府県域への「そなえ」の体制作りを行うため、以下のような形で活用いたします。

  • 災害支援者間のネットワーキング
    • 都道府県域でのフォーラム・連絡会議の開催などに要する費用
  • 災害支援のスキルアップ・人材育成
    • 災害支援の担い手及びコーディネーターを育成するための研修の実施費用
  • 災害支援体制の検討・検証
    • 災害時の具体的な体制を整えるための検証・訓練や検証会議などを通じた体制づくり、計画づくりに要する費用
    • 社会情勢に応じた、コーディネーションの仕組みを見直すための検証会議費用等

上記活動内容に加え、平時からコーディネーターを配置し、
災害へそなえるための人件費にも活用いたします。

代表理事挨拶

かけがえのない人を亡くす、我が家がなくなる、思い出のつまった宝物を失う…。実に過酷な災害現場をこれまで何度見てきたことか。そして、呆然と立ち尽くす被災者の傍らには、ボランティアの姿もありました。
「ボランティア元年」と呼ばれた1995年の阪神・淡路大震災から四半世紀が過ぎ、災害ボランティアセンターの設置やNPOによる活動も定着してきました。一災害に何千・何万ものボランティアは、もはやなくてはならない存在となっています。
それをさらに進化させたい。
昨今の災害の頻発化・甚大化や日本社会の少子高齢化等により、被災者の困りごとはますます多様化しています。その課題解決に、行政はもとより、社会福祉協議会、NPO・NGO、企業、生協、各種団体など、多様な支援主体が持っている情報を共有し、被害の全体像を俯瞰しながら、互いの得手・不得手を補い合い、連携・調整により「支援のもれ・むら」をなくしていくことが、次の目標だと考えています。
災害大国・日本の喫緊の課題であり、最低限、都道府県ごとの、平時からの体制整備が不可欠です。このチャレンジは緒に就いたばかりですが、コーディネーション機能の充実により、すべての被災者の「助けて」の声に応えたいと思っています。

代表理事